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地点のこと

昨夜、地点の「ハムレットマシーン」を観てきた。予想以上に楽しめた。
「予想」というのはつまり「今回は楽しめないんじゃなかろうか…」と敗戦濃厚な戦場へ向かうような気分。(行ったことはもちろんないが)しかしながら「この劣勢がひっくり返ったら痛快だろうなぁ」という期待もあり、その両極から引っ張られて、妙なテンションのかかった、フラフラした精神状態で私は開演を客席で待っていたのだなと、今書いていて気がついた。「楽しめた」要因は案外そこらへんにあるのかもしれない。思えばアトリエ劇研でみた「三人姉妹」以降(2004年だそうな)「地点体験」を重ねた結果、私はある程度「今度の地点は楽しめそうか否か」の予測が立つようになった。予測の根拠はまず第一に「扱われるテキストを予習できるか」。また「そのテキストにストーリーがあるか」も大きな要素だ。今回はその二つともがダメだったので難しいかなあと予想していた。実際彼らのパフォーマンスは毎度僕には情報量が多すぎて私の教養と知性と反射神経で十全に味わえているとは到底思えない。(だから「おもしろい」じゃなくて「楽しめる」という表現をつかっているのだろうけれど。しかしもちろんその「私の知的コンプレックス」だけじゃなくて、舞台上に強度、美しさを認めるから「この作品を『すばらしい!面白い!』という人がいてもちっともおかしくないなぁと想像するわけ)ただでさえ敗戦が色濃く予想される状況に加えて今般の「一方的解雇/パワハラ問題」のことが僕にはひっかかっていた。それは昨日客席にいた観客のおおくもそうだったろう。狭い世界だから。
結果は冒頭に書いたが楽しめた。ネガティブな予測を燃やしつくすような、なんだろう相変わらずの熱量なんだけど、美術の赤色との連想だけど「炎」「火」というイメージ、でそこになんども「消化器」(スモークマシーン、あるいは毒ガス、催涙弾)が噴射され、死ぬけど、また生まれてくる。ゴキブリみたいに。繰り返し(パターン)により生地(ある一定の時期、ジェネレーション、社会通念)が生成される。が、またそこに穴が開く。地図の上の島のように、ホルスタインの体の模様のように、所々が炎で焼かれて穴が空いて、違うレイヤー(過去、未来)が見えてくる…

てな想像をしながら「かしこやったらもっと面白いんやろうなぁ…」といつも通りの感想で締めくくって帰ってきました。

ちょうどその朝にツイッターで見た、(知り合いではない)ある人のつぶやきがとても心にひっかかっていて、ついでにそのことも書こうかと思います。

https://twitter.com/azumaya8/status/1187368237027209219

知人がいいねを押していて私の目にも入ってきたつぶやきなのです。(「いいね」は同意でなくてもメモとしてつけることはあるのでその知人がどう感じているかはわからないのですが)
中段の
被害者の声があがったことに対してなにもコメントがないことが気持ち悪すぎる。
には同意します。「すぎる」かどうか程度は比較しようがないからわかりませんが気持ち悪いですよね。
その「気持ち悪さ」をもう一段具体的に書くと、これはあくまで僕の場合ですが
「まさかとは思うが、この騒ぎになってんのを完全無視する。のか?(まさかな)」
というものです。早く「地点がこの件に関してどういう態度をとりどういう対応をするのか?」を知りたいと思っている。ただずっとコメントがないからこっちはいろんな可能性を考えるしとてもおちつかず気持ち悪い。

ただ最後の
誠実さがない。
に関してはちょっと私は乗れない。その誠実さは「誰に対しての」か?がここには書かれていないからです。普通に(の「普通」ほど怪しいものはありませんが)読めばそれは「被害者およびユニオンへの誠実さ」だろうとおもいます。なぜなら「部外者の知る権利への誠実さ」を、「被害者側への誠実さ」よりも優先させることは具合がわるいし、そのことは多くの人もそう思っているだろうと私が考えているからです(日本語!)
一般論として加害者が持つべき誠実さの対象は

被害者>社会

だろうと。「知る権利」(も「広く知らせる責務」も)ある。
社会の中で(また演劇界隈の中で)「被害者への誠意」と「(被害者以外の人も)知る権利」と、どっちが重要なのか?は議論の余地があると思います。ただ
加害者にとってこの順位はまず変わらない。加害者は何をもってしてもまず被害者に対して誠意を傾けるべきで、そのことで仮に社会から「気持ち悪すぎる」と思われても甘んじてそれは享受するべきだろう。むしろ被害者の頭を超えて社会に向かって「誠意をもって話し合いを進めてまいります」なんていい顔して見せることは被害者に対してより悪い感情、不信感を与えることだってあるだろう。(実際そういう事例はよくありますね。)

「日本国内においてある程度の地位(?)や実力、影響力、知名度がある劇団が起こした騒動に対して、劇団はなんらかのコメントを一般に向けてする責務がある」という言い方もできるでしょう。でもこのつぶやきで書かれているのは少なくとも「日本の映画演劇界への誠実さ」だけということは考えにくい。多分に「被害者側に対しての誠実さ」がない、とされているように私は受け取りました。「被害者側への誠実さ」があるかないかは今の所、当事者以外には判断ができません。上のツイートに続けてリンクを張っていらっしゃいますがこちらにもリンクを貼ります。映演労連フリーユニオンのweb記事「劇団“地 点”解雇事件 試用採用を経て社員として入団した舞台俳優Aさんに対する
一方的な解雇事件!」
http://www.ei-en.net/freeuni/archive/chiten_news190923.html

「団体交渉を地点に申し入れています。」からこちらも更新がなく、その申し入れを地点が受け入れたのか?交渉中なのか?といったあたりがわからずそれが僕たち、<当事者でないもの>にとっては「気持ち悪い」んですが、<被害者側>には「交渉を拒絶した」「受け入れた」というような形ですでにその「誠実さ、不誠実さ」は伝わっているでしょう。あるいは現在交渉中なのであればその姿勢によって地点の誠実さ、不誠実さは<被害者側>に伝わるはずです。私らに情報がまわってこないことが、かならずしも<地点が被害者側に対して誠実さがない>ことにはならない。もちろん被害者側にも誠実でなかったってことはありえますけれど。例えば仮に交渉中なのだとして地点側が「…につきましては現在団体交渉中です。内容がつまりましたらまたご報告をいたします」みたいなアナウンスをwebなどでしたとする。でも被害者側からしたら「いやいや挨拶しただけですけど?交渉も何もうちらの主張を全く認めていないのに、交渉も何もないじゃないですか?何を『双方穏便にまとまりそうです』みたいな『誠意をもって対処してます』みたいな空気出してるんですか?外ヅラじゃなくこちらにちゃんと向いてくださいよ!」ってなことにならんとも限らない。←これはものすごく空想で大盛りにした例ですけれど、だいたいトラブってる同士ってのは双方心がわからないわけで、だとすると、「万が一にも相手がそう思わないようにする」つまりこれぐらい慎重にというか、ならざるをえないのではないか。いったんもめ始めると、交渉して話がまとまるまでに出される当事者のコメント、アナウンスはもれなく「一方的」であるしかなく、交渉が終わってから両者が署名したもの、また同席する場での共同声明で、初めて「一方的でない」説明ができる。

被害を受けたとする方は、一人で戦おうとしたけれど、相手にされなかった。声を大きくするためにユニオンさんに助けてもらう(?どういう表現がいいのだろう?)ことで、すくなくとも「団体交渉の申し入れ」というところまでは進めた。ユニオンはさらに声を大きくしようとwebでニュースを出した。少なくない演劇、映画関係者が注目をしているし、心を痛めている。一人でできることは限られている。連帯することはとても重要だし意味がある。「部外者は口を挟むな」なんていってたらフリーランスみんな奴隷になっちゃう。me too運動もそうだけれど、被害者に憑依しても同情しても、あるいはもうちょっと距離とって客観視しても、その距離感はそれぞれでいいけれど、まずはスイッチを切らずに見て、そのことと繋がっていることはとても重要だと思う。ただこちらがいくら被害者にシンパシーを感じて同化、憑依しても、物理的にその中に(例えばその団体交渉団(?)の一員)入っていない限り、アクセスできない情報もある。<被害者への誠意>というものがその最たるものかもしれない。…と、今回のことで初めてこんなことを考えた。不祥事を起こした企業の謝罪会見とか「遅きに失する」ことがよくあるけれど、(そして私もそういったことに義憤をおぼえるのだけれど)そういった事情もあったりするんだろうな。

ユニオンの記事に書かれていたことが全てではないだろうとおもう。もっと他のこともいろいろあったかもしれない。というかあったに違いない。一人の人間が劇団に入って辞めさせられるまでの経緯や顛末があんだけの分量のペーパーにまとまろうはずがないじゃないか。また記事の表現では正確でないこともあるだろう。すくなくとも地点からすれば「それは違うよ」という箇所はおそらくある。なければとうに謝罪なり地位保全なりしてるだろうから。


僕は地点が多分好きだし、なにより団員の友達がいる。
とはいえ私自身、一人でやってる俳優だ。記事を鵜呑みにするわけじゃないが(というか鵜呑みしにくいぐらいひどい処遇だ)ふざけるなという思いもある。
昨日の舞台を見て、私は、地点の「演劇への誠実さ」を痛いほど再確認した。
それと同じぐらいの誠実さで被害を受けたとされる人(とユニオンの方)と交渉していてほしいと願う。

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