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それはあれだ夏のせい。

銀行の事務センターの裏口から、次々にワンボックスカーが吐き出されていった。運転席と助手席にはヘルメットを被った究竟なガードマンが一人ずつ乗り込んでいる。白いボディーの真ん中に青いラインが一本は入ったそれらの車両はこれからそれぞれ京都市内の各支店へと向かい、お金や重要な書類をもってまたここに戻ってくるのだろう。毎朝九時ちょうどからの五分間ほどは、この「蜂の巣から飛び立っていく働き蜂」が全て巣から出払うのを待たねば、私のような一介の社員食堂業者などは駐車場に侵入する事ができないのだ。警備員の指示通りゲート脇に車を停車した私は、から次々に出て行く蜂を見送った。このコースは大体毎度ここが分水嶺になる。9時前に到着してすんなり駐車場に入れると、その後正午まで、比較的余裕をもって運転ができるが、ここで5分待ってからの納品になると、昼まで少し気ぜわしい思いで仕事をする事になるのだ。とはいれ、事ここに及んでは焦ってもしょうがない。私はスマートフォンを取り出してメールのチェックなどをし始めた。銀行と道を挟んで反対側の工場から、白い大型のワンボックスが道の方へバックして来たのは見えていた。できればもう少し前に出てやった方がすんなり道に出られるのだろうな、とはわかっているのだけれど、こちらとしても銀行のガードマンががっちり「ここから前に出るな!」と赤色灯を突き出している以上、進むわけにはいかない。「ん?ちょっと角度おかしくないか?」と思った次の瞬間、工場からバックして来たその車の後ろのバンパーは私の乗るキャラバンの左っ腹にぶつかっていた。ミラー越しに見えた運転席でおじいさんが「しまったー」という顔をしていた。
私は同じドライバーとして、おじいさんに同情八割、「勘弁してくれよ…」二割の心情を、この夏の暑さでぼやかしながら運転席のドアを開け、車から地上へゆっくりと降りた。

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