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王手2

停めてある原付の方に歩いて行くと、そのメガネの男の人と目があった。
「お疲れ様です」とどちらからでもなく挨拶を交わす。こういう場合のちょっとした機微はどう伝えたらいいものか。まず私も彼も運ぶものこそ違え配達員、ドライバー同士であるという親近感をお互いに持っている。今は彼が仕事中で我が社の車に給油してくれている、つまり私は立場上は「お客さま」ということになるのだが、それは今だけの話で、というのも、この給油業者さんはちょくちょくウチのお弁当を取ってくださるので、彼がウチにとっての「お得意さま」(の社員)でもあるからだ。特に私らお弁当を運ぶ者は、その納品時「平身低頭」といった態度をとることが多い。それはガソリンを配達する彼らよりも我々の方が礼儀正しいというわけでは勿論なく「納品場所」によるものだ。お弁当はポストに突っ込んでおくわけにいかないし、玄関先に置いてくることもまずない。家や会社の中まで入り込んで台所や休憩所、事務所といった「内部」にお邪魔することになる。と、自然、配達員も恐縮して物腰もへりくだり基調になるのだ。しかしその立場が逆転することがある。しょっちゅうある。毎日ウチに肉を届ける業者さんや、豆腐やコンニャクを納めるお店は、毎日ウチのお弁当を取って下さるし、社員食堂の運営をさせてもらっている企業さんの商品をウチらが買うこともたびたびだ。商売も人生も「行って来い」なわけで、「配達する時はヘコヘコしてるけど、納品されるときにはふんぞり返ってる」ってのは非常に気持ちの悪いものがある。(この辺りの感覚は内勤の、特に「総務」だとかいう部署にいる人間には分かりづらいのだろう。)しかしだからと言って我がの商品を納品しているときに「フラットに、フランクに」というわけにもいかないから、ある程度、腰は低くなる。ということが配達員同士、つまり私とメガネの彼がお互いに意識をしている。この時、私と彼が乗ったシーソーは若干、彼の方が下に傾いていた。それは彼の意とすることで私もそれを了解している。また遠くないいつか、私がお弁当を運んで行くと、その傾きが逆になるはずだ。その想像までもを私たちは共有しその上で、シーソーの微妙な傾きをキープしながら会話をしている。「機微」とはそのことだ。まぁ、わかっていただかなくてもいっこうに構わないのだが。

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