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脚本指導(1)

「失礼します」と心細そうな声がドアの向こうでした。
「どうぞ」と返事をするとおそるおそるドアをあけて五人の生徒たちが会議室に入って来た。
洛北高校の演劇の指導に入らせてもらうようになって今年で六年目だ。(ありがたい)今日は「脚本指導」の日だった。この学校では文化祭で劇を作るのは二年生。全七クラスの脚本関係者と面談をする。各クラス25分ずつ。五分の休憩を挟んで次のクラスの生徒たちがやって来る。クーラーの効いた会議室でさせてもらえるのはありがたいが、とはいえ都合30分×7=三時間半の長丁場だ。私は事前によったコンビニでチョコレートも買うのを忘れなかった。クラッシュアーモンドが入ったチョコを口に放り込んで、私は彼女たちに、長机の向こう側の席をうながした。四クラス=二時間が過ぎると頭の回転が確実ににぶってきている。なるべく早く当分が脳に届く事を願いながら私は台本に目を落とし、ノートパソコンの画面に表示された「そのクラスの台本への感想、評価」を確認して、それから前に座った生徒たちを見た。生徒たちは不安そうな様子で私が口を開くのを待っている。私はすごく気が重くなって、もう一度パソコンの画面に目を移した。これから私は「この台本がいかにダメか」ということと、いくつかの「こういう風に書き換えてみては?」という提案をすることになる。そしていうまでもなく、「ダメだし」「提案」よりもはるかに大事なのは「君らなら出来るよ」と励まし、実際そうじゃないか?と思ってもらう事だ。二十五分間で「あぁ、ダメな台本を選んでしまった」とドヨーンと落ち込んでいる高校二年生たちを「よーしやってみるか!」とキラキラした目に持って行く。なんてドラマチックなんだろう。この面談自体が「劇」のようだ。私はそのような三十分間即興劇に今既に幕を開けたこの回含め、後まだ三回、本番が控えているのだ…。
毎年七クラス分の脚本が集まると、「やりやすそうなもの」「やりにくそうなもの」「すごく面白くなりそうだけど大変そうなもの」「簡単だけど詰まらなさそうなもの」といろいろなものが入っている。その内には間違いなく「どうしょうもないもの」も入っている。今回はその「どうしようもないもの」が後半三コマに固まってしまったのだった。もう一つ、チョコレートに手を伸ばし、ガリガリと噛み砕き嚥下しながら私は決意を固め、それから彼らに向って話し出した。(続く)

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