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名探偵家族

日曜日、くら寿司のドアを開いて待ち合いの人口密度に尻尾を巻いた私たち家族は、ドアを閉めてとなりのサイゼリアに急遽進路変更した。日曜日の夕方のくら寿司に予約無しでふらっと行く方が間違っているといわれればそうかもしれない。しかしそれにしても異常な込みっぷりだ。寿司をそれほど好きではない娘がなぜか「くら寿司に行きたい」と言い出した理由を聞くと「ガチャポンで名探偵コナングッズをやっているから」だといった。このこみっぷりにはそう言う理由もあるのかもしれない。くら寿司と駐車場を共有しているサイゼリアの方の客席は、八割がたが埋まっていたけれどのとなりの混雑ぶりに比べれば「空いている」と言っても良かった。むしろくら寿司から溢れた人たちの受け皿として機能しているように思えた。
「いらっしゃいませ。お煙草はお吸いになりますか?」私たちを見つけてよってきた高校生ぐらいにみえる男の子の接客員に妻は答えた。
「禁煙で」
「かしこまりました。こちらどうぞ」妻と娘と私は彼についていった。その店員の濃い茶色のベレー帽のサイズが合っていないのか随分と大きく見える。それで若く見えるのかもしれない。と、妻が頓狂な声を出した。
「あの、『禁煙』ですよ」
見ると確かにここは禁煙席のスペースだ。店の真ん中辺りの一角でガラスのパテーションで囲まれている。囲まれて入るものの密閉されているわけではないから、ここに近い禁煙席に案内されると、煙草を吸わないものはあまり愉快でない思いをする事になるのだった。(そう言った場合、私たち家族はきっぱりと、『煙草の煙が来るので別の席にしてください」言う)しかしこのときは、「近い」も「遠い」もない。「そのスペース」に案内されたのだ。どういうことだろうか?と思っているとその子供っぽく見える店員は事もなさそうに
「はい。禁煙席です」
と言ってからスタスタとバックヤードへ歩いていってしまった。狐につままれたような気になりながら席に座ると、確かに煙草の匂いはしなかった。灰皿も置いていなかった。でもたしかにここは…、と思っていると、テーブルを挟んで正面にすわった妻がクスッと笑って、指を指した。私の背中の方。振り返ってみるとそこにはお知らせのポスターがあった。
「サイゼリアは全店舗禁煙になりました」
なるほど。つまりさっきの彼は長年の習慣でつい「煙草を吸いますか?」と聞いてしまったのだろう。あるいはそこで「吸います」と答えていたら「当店は全席禁煙になっていまして…」と続けるつもりだったという事もあり得るけれど、おそらくそうじゃないと私は推理した。そういう口ぶりではなかった。聞いたものの途中で「あ、これ聞いてどうするんだ?」という心中の焦りを隠すように至ってスムーズに何事も無かったかのように我々を席にエスコートしようとしたのだが、運悪くうまくいかなかった、というのが真相に違いない。と、私たち親子三人は推理を結論づけた。


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