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風通し

二十二時。京都芸術センターでの稽古からバイクで帰宅した私は、団地一階のポストの中を確認してから階段で五階まで上がった。背負っているリュックにはパソコンと書類と着替えと、帰りにスーパーに寄って買ったビール缶(350mlの六缶セット)が入っていてとても重たかった。五階の我が家の玄関前にたどり着くと部屋の中から映画のものらしき音声が聞こえていた。借りて来たDVDでも見ているのだろうか?カギを開け手荒いうがいを済ませて部屋に入ると、娘が一人でテレビを見ていた。ウサギの警官が主役のアニメーション映画だ。娘と私と二人で劇場に見に行ったのも記憶に新しい。私の顔を見るなり娘は「ナマケモノのシーン終わったで」と教えてくれた。確かにあれは面白いシーンだった。

私はニューヨークに一度だけ行った事がある。大学の卒業旅行で仲間と一緒に行ったのだから、二十一歳の時になる。随分昔の話だ。黒人がいて、白人がいて、チャイニーズがいて、スパニッシュもいて…正に「人種の坩堝」だ。と感心したものだ。日本に帰国して空港から自宅に戻る電車の中で、「乗客がほとんど全員日本人であること」に猛烈な違和感を感じたのを覚えている。その違和感というのは言い換えれば「私が生きている場所は世界の片隅である」という実感だろう。
「世界の片隅」は「世界の中心」や「人種の坩堝」なんかよりもよっぽど風通しと見通しの良い場所に違いない。とウサギの警官の声を聞きながら私は思った。

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