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Tポイントに救われる。

「三百六十五円になります」と朗らかなおばさんの声がした。のど飴とアイスクリームの合計金額はレシートはもう無くしてしまったので本当は三百三十二円だったかもしれず三百七十円だったかもしれない。いずれにせよ聞いて気持ちのいい声だ。私はここ最近このファミリーマートに立ち寄ることが多くなった。第一に駐車場が広くて配達の途中で昼休憩をするのに気兼ねが無い。第二に店員さんが気持ちがいい。このときレジを打ってくれたおばさんも、それよりも少し若いぐらいのおばさんも。国道沿いのこの店には昼の時間私と同じように休憩を取りに来ているドライバーが多く、また近所の会社の人も多く利用しているようで店内は大変繁盛している。レジにも行列ができてそれを忙しそうに捌きながら、しかし彼女たちが不機嫌そうにしているのを私は一度も見たことがなかった第三に週刊誌やマンガに封がしておらず、必要なら立ち読みもできる。「パラダイス」と言ったら明らかに過言だが、「良いコンビニエンスストアー」であるに違いはなかった。
「三百六十五円になります」
その声がすると同時に、私はふっと凍り付いた。思い出したのだ。昨日財布の中にはいっていた最後の一枚の千円札を100均で文房具を数点買う時に崩したことを。そしてその後小銭をかき集めて自販機で缶ビールを三本買ったことも。
「ああ!」
声が出た。二つ折りの財布の小銭入れを開くまでもない。これは絶対にない。大きな声を出す私を見て、レジの向こうのおばさんもだいたいのことは察してくれたのだろう。レジを挟んで私たちの間に微妙な空気が発生していた。しかし次の瞬間私は再び思いだした。今さっきおばさんが通してくれたTカードには一万円分強のTポイントがたまっていたことに。こうして危機は回避された。落ち着いて考えればクレジットカードもあるのだし、ごめんなさいと言って商品を棚に戻せば済む話なのだけれど、財布の中にお金がないと気がついたあの瞬間、私は何かとてつもなく大きな取り返しのつかないことをしでかしてしまったような気になってしまった。それはきっと私に「お客様は神様だ」的な思想が内在可しているからだろう。いやもっと正確に言えば「お金を払っている時の私は、レジを打っている人よりも偉い」というようなものじゃないだろうか。そんなことは勿論無い。理屈でわかっているし、普段から自分は「お金を払ってるから偉いんだ」なんて考える人間では無いと思っている。でもそれならばこの「お金忘れた時のあわてぶり」は説明できない。そう、きっと私はお金を払っている時の自分を「偉い」と勘違いしているのだ。だからその「偉さ=お金」が無くなったとたん、シーソーが逆に傾くように一気に卑屈になってしまうのじゃないだろう。私はTポイントで商品代金を支払ったあと、そのまま店のキャッシュディスペンサーでお金を下ろした。

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