FC2ブログ

何が場所を劇場にするのか。

そのビルは曰く名状しがたい建物であった。特に奇抜だとか、意匠がアバンギャルドで言葉がカバーできないということではなかった。また「平凡すぎて」描写する言葉を全てはねつけるということでもなかった。その「名状しがたさ」の説明が難しいことこそが、まさにそのビルの「名状しがたさ」な訳であるからして、これはもう宿命的にブログで取り上げるには向いてい無い案件なのだった。河原町通りと烏丸通の間。九条通よりも少し北。京都に住む人でわかる人にはわかるエリアにその建物はある。いわゆる「マンション」ではない。全部で五階だてぐらいだろうか?仰ぎ見れば確認できるのかもしれないが、面している通りが車がゆっくりすれ違えるほどの幅しかない為、建物の前にようやくたどり着いた私も、わざわざ背中を反らして仰ぎ見ないことには目の前のビルディングが何階建てなのか確かめられない。三階で行われている黒川さんのコント公演に用事があるだけでその建物自体にとりわけ興味があるわけでない私は、背をそらしてそのビルの概要を確かめること無く内部に足を進めた。三階までは階段で上がった。いわゆる「雑居ビル」の感じは無かった。雑居ビルであれば確実に入口のふきんや階段の登り口に「何回にどう言うテナントが入っています」という小さい看板がかかっているものだ。「スナックあけみ」だとか「梶原不動産」だとか。そういうのは一切無い。じゃ、マンションなのか?というとそういう気配もない。なんというか「生活」の匂いがまったくない。

けったいな建物だなぁ

と思いながら三階まであがると、丸井さんが受付らしきカウンターの向こうに立っていた。彼の顔を見ると「ここが劇場」であると思い至る。というかなんというかえらいもので長いこと制作をやっている彼が、腰高の台の向こうにいるだけで「そこは劇場だ」と思わせる。何かの拍子で彼がファーストフード店のカウンターで座っている前を通りがかった私はきっと一瞬「あれ?ここ劇場?」と錯覚するに違いない。とそんなことをぼんやり考えながら一番端の客席に座った。

コメントの投稿

非公開コメント

twitter
カレンダー
09 | 2018/10 | 11
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
最新記事
リンク