雨の朝

スクーターのキーを時計回りに回した。ガコッと音がして座面が少し浮き上がった。私はシートを起こして中からヘルメットを取り出した。白いフルフェイスタイプのヘルメットは三年ほど前ネットで五千円程度で買った安物だ。ヘルメットの頭を入れる所に詰め込んであるカッパを取り出す。これは一年前の誕生日に妻が二万円ほどで買ってくれた上等のものだ。ちなみに私の持っている服で二万円を超える物は、このカッパと一張羅のジャケットのみだ。多分。カッパを「服」というのならだけれど。服飾デザイナーをしている義弟からいただいた革ジャンもきっと上等なものだろうけれど、自分で払った物ではない。ただ「自分で払った」ということで言えばジャケットにしても何年か前の結婚記念日(おそらく十周年だった)に妻が買ってくれた物なのだし、結局の所私は自分で上等の服を買うことができない男なのだ。カッパに袖を通し、ズボンを履き、リュックをビニールのゴミ袋でくるんでバイクの足下に置いた。カッパは二万円だけあって本当に水が漏れ入ってこない。最後にヘルメットを被って、私はスクーターのエンジンをかけて小雨の中、会社へと向かった。

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