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ベッドから落ちる

「ズン」という物音と軽い衝撃を感じて目を覚ますと、隣に娘が落っこちていた。昨夜実家に帰ってきた私と娘はよるの八時半頃には風呂に入らせてもらい、九時過ぎには「客間」とされる部屋でそれぞれ眠りについた。私はふとんに、娘はベッドに。寝る前に娘は「ふとんのほうがいい」と言った。四月で小学校五年生になった娘は我が家では日々ふとんで眠っている。だから彼女にはどこかしらベッドというものに憧れがあるのではないか?あってしかるべきだ。と思っていたのだがさにあらず。彼女ははっきりと「ふとんで寝たい」と言った。しかしその時点で既に僕は布団の中で半分以上寝かかっていたので「もうそっちでええがな」と言ったのだった。悪いことをした。私はとても酔っぱらっていたし眠くて仕方がなかったけれど、別に娘に意地悪をしたかったわけではない。今から思うと変わってやれば良かったのに、でもその時、どこかしら「娘がベッドで寝てみるのもいいのじゃないか」と思ったのは、おそらく、妻から聞いていた話が関係している。

妻は幼少時代ふとんで寝る生活で、ベッドというものに格別の憧れを持っていたそうだ。ある日家にあるテレビを見ていて「ベッドみたいだ」と思った。テレビはテレビ台の上におかれていた。そのテレビ台は木製で、テレビの乗った板が回転する四つ足の物だった。「木の四つ足」がベッドとの類似点だと言えなくはない。幼い妻は(勿論その時はまだ私の妻ではないわけだが)毛布を持って来て、そのテレビの上に乗り(僕にはうまく想像できないのだけれど)テレビの上で体を横にして、毛布を被り、そこで眠った。のだそうだ。

娘にはその「ベッドへの憧れ」は遺伝しなかった。また「テレビの上で眠っても落ちない」バランス感覚も遺伝しなかったのだろう。朝起きて聞いてみたら「二回落ちた」と言っていた。

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