「旅行者」ってこんなに面白かったっけ?

下鴨車窓の話です。先週の日曜日アイホールで拝見しました。田辺さんの作品は結構沢山拝見しているのですけれどもこれまでで一番面白く拝見しました。

主役どころである大沢さんが素晴らしかったのは言わずもがなですけれども、『4人目の姉妹」役で登場した笠井幽夏子さん(俳優座)は、本当にちょっと感動してしまいました。そうなんです。田辺作品であってもああいう「まっとうな役作り」による確かな「立ち方」はできるんです。大沢さんは確かに素晴らしかったし、作品クオリティーへの貢献度を考えるなら勿論彼女が「素晴らしい」んですけども、もう少しオタクな話として、やや「細部を感情で流してしまっている」と言う事はあったかと感じたのです。それは笠井さんに比べたらってことなんですけども。

その俳優の声が、言葉が入って来た瞬間に観客の脳内で解凍される情報量が、「ちゃんとしている俳優」と「適当にしている俳優」とでは違いますね。笠井さんのセリフ、声には「細部」があり「情緒」があり「風景」があり「時間」もありました。すごいなぁ。

あとファックジャパンさんと大熊猫さんは、僕も大好きな「昔、珍獣。今、怪優」のお二人なんですが、今回「怪優」通り越して「怪獣」になってた気がします。田辺さんとそのごメールでお話聞いたりして再確認できたのですが、作品全体のバランスとして、何しろ「爆発して行く」というミッションがあったのでしょう。事実それが功を奏していたのも間違いの無い所だと思います。Fさんもパンダさんも明確な目的意識と使命感と、それ以上の「嬉しさ」でそこに注力されて行ったのだろうということは想像がつきます。
ただその上でも僕は「怪優」の彼が、彼女が好きです。妻の弁護士の背景を背負いながら爆発するようなことが、できる希有な人たちだと思っているので。「繊細さと大胆さを併せ持つ」なんて言う言い方を良く言います。これは別に特別な事ではありませんよね。万人が「繊細さと大胆さを併せ持」っている。ただ多くの人はそれが「裏と表」とかあるいは「ある時は繊細であり、またあるときは大胆である」という「同居」の仕方をしているのに対して、ファックさんやパンダさんはそれが「同時」にあるんです。
「繊細=大胆」なんですね「繊細であることが大胆」というか。巧く言えないな…。

三遊亭はらしょうさんは、実は僕は嫌いでした。個人的に「嫌う」ほどおつきあいがあるわけではないので「嫌い」というのは演技がということです。そして僕あんまり人の演技を「嫌い」とか思わないので、つまりこの「嫌い」はタチの悪いやつだなぁと自覚もしていました。嫉妬ですね、早い話が。

まだ関西にいらっしゃったときから独特のリズム、変調子を持ってはりました。クセ玉だけ投げるような、「俳優」としてはナックルボーラーみたいな印象を持っていました。ただそこを僕は嫌いだったのではありませんで、彼のテンションが「嫌い」だったのです。薄いセルロイド紙しみたいな「ピリピリ」したテンションです。「ものすごく強力な力がかかっている」というテンションもありますが、「弱々しいのでほんの些細な事でも破けそう」というテンションもあります。はらだりゃん(三遊亭はらしょうさんの昔の名前)はそう言う俳優でした。もう弱くって薄くってちょっとした事でびりって破けそうで、そういう「ピリピリ」したテンションを、つまり彼を愛する人は僕の周りに少なくありませんでした。僕はそれに嫉妬したんです。「なんでやねん、かまってちゃんにかまわずに、僕をかまってよ」ってことですね。お恥ずかしい。
はらしょうさんはその後東京に行かれて落語家としてキャリアを積まれました。その中で「作り手」としてもさることながら「送り手」としての力量をモリモリつけられたのでしょう。
ピリピリでもペラペラでもない。三遊亭はらしょう、しっかり分厚い!!なのに変なリズム!!おもしろーい!!


間もなく東京公演だそうで。
下鴨車窓「旅行者」

面白かったです。



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