Fさんへの手紙

金曜日の晩にトランク企画のインプロショーが終わりまして、そちらの事を書きたいと思ったのですが、
昨日土曜日の晩のアートセンターでの明倫お花見も実に愉快で素敵な夜でしたので、そちらの事も書きたいのですが、
今夜拝見したFジャパンさんの一人芝居の感想と言うか、彼への手紙をまずは書いてしまおうと思いました。

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Fジャパンさんの一人芝居を拝見しました。冷静と情熱の間。知性と狂気のグラデーション。ファックと元林の振幅。それら全部を一人の人間に納めようとすると、やっぱりあれぐらいラブリーな体型にならざるおえないのでしょうか?京都演劇界随一の「愛されキャラ」でありながら、その事実そのものに彼が感じる物足りなさ、切実ないらだち。「いや、俺がホントに欲しいのはそれじゃない」というような。
35(?)歳にして、ようやく、それら(物足りなさ、いらだち)と一応の折り合いを付けた。そんな作品だったのではないかと感じました。

この作品の元には「お母さんとファック」という作品があるそうです。(タイトルがひど過ぎて閉口しますが、「天皇と接吻」のような、つまりここでの「と」はandなのだ。と考える事にします。)そして今から思うと、僕はその「お母さんとファック」の設えや動き、演出などがない「紙に書いたテキストをファックさんが読む」という現場にいたことがありました、つまりまぁリーディングというか、本読みですね。Fさんが「彼の父親」にではなくて、「父にならなかった男性」に感情移入していくという構造は、その当時からありまして、そのねじれ方に僕はひどく心を奪われてしまったのを思い出します。本当に「うっ」と来てしまったのです。その当時のバージョンでは、それはただねじれてあるだけでそれに対しての説明などはありませんでした。
「お母さんとファック」をへて、ごまのはえさんに台本を書き下ろしてもらった今作では、その「ねじれ」に対して、極めて明快な言葉での説明が追加されていました。説明と言うか、補強と言うか。なぜ元林が「京都の人」を応援するのか?「母が京都の人と一緒になる」事を望むのか?そしてそれは「元林」の存在自体の否定につながることだということだとか。(だって、そうすると生まれて来ないわけですからねノブオさんは)
本読みを聞かせてもらった時の、説明もされぬまま、ただねじれて「宝ケ池のボートに乗っている京都の男」に感情移入しているシーンとかがすごくしびれたのを覚えています。それはつまり「ファックのある病状」として僕の前に立ち現れていたのです。「どうしてそうなのか、本人にすら自覚されない、消滅欲求」みたいなことです。その土台の上でなされる「僕が事情を知ってたら彼女と別れなくてすんだのか?」のごとき自問は、僕はもう大好きでした。エッシャーの絵みたくねじれてて、でも、本人はそのねじれに自覚的でなく、ただ切実で…。

それが今回は、「そういう構造です」と提示(説明)されました。謎は解き明かされ、症状は「過去の。あるいはフィクションの症状」として提示されるにいたって、ようやく「作品」としての価値をまとったのでしょう。
その事に直面して僕は、「あ、これは僕が以前に聞いたものとは違うのだ」と感じました。「カルテ」が「作品」になるという事なんだろうなと落ち着いて、今は思います。すごく残念に思ったと同時に、「いや、これで良かったのだ」とそうも思うのでした。冒頭「一応の折り合いを付けた」と書いたのはそう言う意味においてです。ショートして焦げ付くような思春期の自己否定と自己愛との往復の残響をやっとやっと一段落さすことができたのであれば、Fさんよ。よろこんで下さい。やっとここから晴れてモテ期です。だって自分自身と(あるレベルの)折り合いのつける事ができない男なんて、めんどくさ過ぎてモテるわけがないのです。
逆に言えば「自分と折り合いを付ける」ということが「他人を愛する」という事の条件なのかもしれません。「自分と折り合いがつかぬまま、他人を愛する」なんてことはとてもアクロバティックなことですし、実際の所「他人を愛している」気になってるけど、きっとその時愛していたり憎んでいたりするのは、「その彼女」ではなくて「自分自身」だったってなことは良くあります。

おそらくですが、ついにあなたにも「愛される」「愛する」準備が整ったのです。
残酷なまでに美しい「若さ」という病状を捨て去った替わりに。

40歳が35歳にこのような事を言っている事が滑稽でなりませんが、許して下さい。僕は自分がうっちゃって来た「青春」を随分と長い間あなたに投影して続けてここまで来たという事に今夜気がつかされました。

またゆっくり飲みましょう。お疲れさまでした。

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