「台詞を全部覚えて全部忘れる」こと「『笑うこと』」

明日はまた高槻のスキルアップコースです。
宿題がありまして、受講生たちは「日記を書いてくる事」
僕は先週でた質問に対しての答えを用意して行かねばなりません。

質問1
『「喜怒哀楽」の「喜」。喜びや「笑い」の表現が苦手である。スムーズに(あるいはパッとスピーディーに)出て来ない。なぜでしょう?』

うーん・・・・。なんでなんですかね?(笑)「なんで、僕はすっとうまく笑えないのかしら?」と考えて来てみてね。と逆に宿題を出したのですが・・・。どう答えたもんだろうか。と。
「笑けるぐらい面白い事」があれば人は必ず笑うかというと、そうではありません。
また、いわゆる「笑って見える」ような身体的運動(口角があがって、小刻みに「ははは」と声が出て)が起こったら、かならず「愉快に感じている」ように見えるかというとそうでもありません。まずは「笑う」ということの心と体のメカニズムを把握することだとは思うのですが、より根本的には彼がどういう要請にこたえようとして「笑おう」としているのかなんですよね。

笑いたければ笑えば良いし、笑いたくなければ笑わなければいい。言い換えると
「笑いたければ笑ってしまうのだし、笑いたくなければ笑えない」ということ。

「笑う」ということ(だけじゃないです。全てですが)を能動的な自発的な運動だと感じしてしまう捉え方。
その「自分の心、体、行動」の捉え方、感じ方、つかまえ方。を変えて行くんです。
あと二回、実は僕の「俳優の意識」三回講座の大きなテーマの一つはそこにあります。

「出力(される何か、台詞であったり、動きであったり)」をどうにかしようとするのではなく

「適正な入力が入った場合には、適正な出力が出るような身体でいること。そのような準備をして、その場(今)に存在する事」
が、俳優の仕事の全てなんです。
うん。

・・・・・

もう一つ質問

質問2
「どうしても準備してしまう。台詞を覚えてストーリーの内容も分ってしまうと、それを再現しようとする。(例えば、自分の台詞の次に話す人の方を、事前に見てしまう。)先回りしてしまう。どうしたらいいのか?」

これね。うん。「台詞を全部覚えて全部忘れる」みたいなことを言いますが、まぁそういうことなんです。
基本的には俳優の意識は二重に存在しなくてはなりません。(役を演じるという事が無い演劇もあります)
いわずもがな一つは「役の意識」で、もう一方は「俳優、パフォーマーの意識」です。

「思い出す演技」というのは本当に難しい。例えば誰かの名前を失念して、それをフッと思い出す。そんな演技です

同窓会にて
「あの、ほら・・・・。ほら、あの、いっつもう後ろの方の席に座ってさ、なんか目立たない感じの・・、あれ?なんてったっけ?『か・・・亀、ちがう、上、・・・カミ、ヤマ・・・」違うな・・・。あの、・・ほら、タバコいっぺん見つかった・・・。あっ!!!カマタ君だ!!」

というような演技。
「役の意識」としては「カマタ」という単語は「忘れてなければいけない」
「俳優の意識」としては「カマタ」を「覚えておかなくてはいけない」※芝居が進まない(笑)

このアンビバレントをうまく引き受ける。まぁ「ガラスの仮面」でもなんでもいいのですが、これは本当に「感覚」なんですね。ジャグリングみたいな事です。二つの意識をうまく保つ。
言葉は安っぽいですが「入り込んで」お芝居をすることも重要です(不要なお芝居もあります)が、それと同時にそれをモニターしてディレクションを入れる「パフォーマー」の意識も持っておかんと、舞台から落ちて大けがしたりします。
僕の体感で行くと、「監視するほう(俳優)」を時間的に後ろにしてやるような感じです。今は基本的に「役の意識」が支配していて、それよりも「遅れて」監視しているような。
「この先何かせねば」という風に「外の意識」が入って来て演技をすると、大概ろくなことになりません。
「あ、いまちょっと、ずれているな?」というような、事後的な気づき。歩いていて足の裏が、地面からはがれた瞬間に「あ、ちょっと足の置き位置ずれていた?」と気づくような。ボランチぐらいのイメージなんです。(笑)
だから、具体的に「はい、さっと戻そう!」という風に乱暴に進路を変えるようなあり方ではなくて、もっとなんというかふんわりと、徐々にって感じですかね、修正するにしても。

僕は良く言うたとえなんですが、演技をする時にどこか「ボールの行き先は球に聞いてくれ」という意識でやるのがいいと思います。野球のピッチャーの話です。
ボールの行き先ばかりを気にしていると手投げになるんですね。台詞にも力がこもらない。
それよりも「自分のフォーム」をどうするか?だけを考える。ボールが指から、ミットに収まるまでの事は、ある意味「知らん」という意識。
でもこれ、やってる事は同じなんです。だって、どちらにせよピッチャーのできる仕事は「自分の体を(腕を、腰を、指を、どう操作するか?)ということなんですから。

「未来においてどう言う結果が出るべきか?」という意識ではなくて
「その結果が出るような今、自分を用意する」という意識。これは「どうしたら笑えるか?」という上の質問への答と全く同じになります。

・・・・・

インプロの木村さんがやるようなシアターゲームは、うまく伝わるととても有効だと思うのはこの点においてなのです。「今を大切にする」「今に見を置く」こと。
もちろんそれはインプロの重要、必須の技術であるのだけれど、台詞のあるお芝居にとっても。いやあるいは台詞がなくてアドリブで進んで行くインプロよりも、「用意されてしまっている未来を無視せねばならぬ」台詞芝居に関わる俳優にとっての方が、重要必須な技術ではないかと思うからなんです。

実際の俳優のオペレーションは
「与えられた台詞、未来の振る舞い」を忘れる。ということではなくて「今を濃くする」ってことなんです。そうして相対的に「あたかも未来の事なんて知らない人」のような身体の状態を保つという事なんです。そのことと、シアターゲームとをうまく繋げて紹介してあげることができたらな・・・。

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